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ストーカー事件 2/2

逗子ストーカー殺人事件

(1) 事件の経緯

 2人は2年間交際した後に別れた。だが、男は納得しなかった。別れてから2年後、女性は別の男性と結婚し、転居した。新しい姓や住所は男に教えなかった。

 男は女性のfacebookで女性の結婚を知り、4月から嫌がらせメールを始めた。次第にエスカレートし、「刺し殺す」などと脅しが加わった。メールは1日に80通から100通に達した。

 女性が警察に相談した。6月、男は逮捕された。7月、ストーカー規制法に基づく警告が出された。9月、脅迫罪で懲役1年・執行猶予3年が確定した。女性は家に防犯カメラを設置した。 

 翌年3月下旬から4月上旬にかけて、男は1089通のメールを女性に送った。メールには「結婚を約束したのに別の男と結婚した。契約不履行で慰謝料を払え」などと書かれていた。

 4月上旬以降、メールが届かなくなたので、女性は借りていた防犯カメラを返却した。

 11月、男は探偵事務所を使って女性のアパートを特定した。男は無施錠の1階窓から侵入して女性を殺害した。男は2階の出窓にひもをかけ、首を吊って自殺した。

 12月、被疑者死亡で不起訴処分となった。

(2) 情報漏えい

 男は逮捕前及び有罪判決後からYahoo!知恵袋で複数のアカウントを使い、約400件にもわたって「被害女性の居住地域に絡む住所特定に関する質問」「パソコン・携帯電話の発信による個人情報の収集に関する質問」「刑法等の法律解釈に関する質問」「凶器に関する質問」等の質問をして情報を収集しようとしていた。

 男が依頼した探偵事務所から調査依頼を受けた会社の実質的経営者は①被害女性の住所を聞き出すため、女性の夫を装って市役所に電話をかけて「家内の税金の支払いの請求が来ているが、住所が間違っていないか」などと質問し、応対した市役所職員に女性の住所情報を調べるための不要なコンピューター操作をさせた(偽計業務妨害罪)。②ガス会社の契約者情報2件を2013年6月に不正に入手した(不正競争防止法違反<営業秘密侵害>)。懲役2年6月、執行猶予5年で確定した(名古屋地裁 2015年1月20日)。

 女性から市役所には情報制限が要請されていたが、総務部納税課の職員のパソコンからアクセスすると閲覧時に警告表示があるだけで閲覧自体はできる状態であった。市役所の閲覧記録のIDは60代の納税課再任用男性職員であったが、「離席する場合はログアウトする」などのマニュアルが守られておらず勤務期間中は常に同一IDでログイン状態であり、職員が自席以外のパソコンを操作することも常態化していた。そのため複数の職員が操作できる状況にあった。可能性のある担当職員全員が「閲覧した記憶がない」と述べたため、どの職員が実際に被害女性の住所情報にアクセスしていたかは不明のままである。

(3) 法 改 正

 2013年6月、メールの連続送信をつきまとい行為として禁止する改正ストーカー規制法が成立した。

三鷹ストーカー殺人事件

(1) 事件の経緯

 関西在住・日比混血(ジャピーノ)の男と東京の女子高生がSNSで知り合い、遠距離の交際が始まった。1年後、女子高生は外国に留学することになり、男と別れることにした。半年後に女子高生が帰国し、男は復縁を求めた。女子高生は着信を拒否し、連絡を絶った。復縁できないと思った男は女子高生を殺害することにした。

 女子高生が高校に相談し、高校は近くの警察に相談した。警察は女子高生の自宅近くの警察に相談するよう指導した。逗子ストーカー殺人事件を教訓とした改正ストーカー規制法(2013年)が施行されて5日後、女子高生は両親と警察を訪れ、「待ち伏せされている」と相談した。新しい規制法に基づき、警察が男に電話をかけた。だが、出なかった。

 当日、男は関西から東京に向かい、雑貨店で刃渡り13cmのペティナイフを買った。昼過ぎに被害者宅2階の無施錠の窓から侵入し、1階の女子高生の部屋のクローゼットに隠れて待った。

 女子高生は帰宅し、警察に電話し、無事を伝えた。両親は外出していた。

 直後、男がクローゼットから出て、女子高生を追いまわし、路上で刺した。女子高生は死亡し、懲役22年が確定した(東京高裁 2017年1月24日)。

(2) 新法成立

 男は米国のアダルトサイトに女子高生の裸の画像や動画をアップしていた。これらの画像や動画は殺人事件の後に拡散した。2014年、リベンジポルノ被害防止法が成立した。

長崎ストーカー殺人事件

 2人はネットで知り合い、交際を始めた。無職の男は千葉県で1人暮らしの女性宅に居座り、日常的に暴力をふるった。女性はスーパーで働いていたが、帰宅時間が少し遅れただけでも暴力を受けた。全身はアザだらけになり、頭から血が出るほど叩かれた。熱が出ても病院へ行かせてもらえなかった。

 女性の父親が地元の長崎県警に相談した。長崎県警が千葉県警に通報し、千葉県警が事情聴取や警告を行った。男はストーカーとなり、女性や女性の知人に「居場所を教えなければ殺す」「家族を殺す」等のメールを送った。千葉県警が再度の警告を行い、男は実家の三重県に帰った。

 その後、男は千葉県の女性の自宅や路上で女性を殴って怪我をさせた。男は三重県の自宅で自らの父親の顔面を殴り、行方不明となった。男の父親は東京都内で女性の父親と会い、「息子が自分の顔を殴り、金を持って姿を消した。気を付けてほしい」と伝えた。

 男は長崎県の女性の実家に窓ガラスを割って侵入し、女性の祖母、女性の母親を殺害した。男は死刑となった(福岡高裁 2014年6月24日)。

小金井ストーカー殺人未遂事件

(1) 事 件 前

 被害者の女性は大学に通うかたわら、女優やシンガーソングライターとして活動していた。

 ①男は女性のTwitterアカウントに書き込みを続けていたが、女性からの返信はなかった。②男は一方的に贈りつけたプレゼントを返すよう求め、女性は腕時計を返送した。それが殺害の動機となった。当初の好意的な書き込みに嫉妬心が加わった。

 ①女性は警察に相談した。だが、警察は「女性に恐怖心が見られなかった」として一般相談として扱い、ストーカー等に対応する専門部署に連絡しなかった。②女性の母親は男の住む京都の府警に相談した。だが、府警は警視庁に相談するよう伝えただけであった。

 男は柔道が得意で、中学の県大会では優勝した。だが兄によれば、「自分の感情を表現するのが下手で、溜め込んでは感情を爆発させる事が多かった」。

 余罪もある。①芸能活動を行う10代女性のブログに対し脅迫的な書き込みを残し、警察から呼び出されたが、出頭しなかった。②滋賀県在住の女性は、男との対人関係について警察に相談に相談していた。

(2) 事件当日

 当日、男は自宅のある京都から東京に向かった。ライブ会場に入る女性を待ち伏せした。女性は110番通報し、会場に入らないよう諭した。

 男は女性が電話をかけたことに激高し、女性を襲った。女性は110番通報したが、女性が110番緊急通報登録システムに登録していたために警察は現場に向かわず、被害者の自宅に向かった。直後、目撃者の通報があり、警察が現場に向かった。男は自ら119番通報した。警察は男を逮捕したが、女性は意識不明の重体となった。意識は2週間戻らなかった。

(3) 事 件 後

 法廷で、女性は語った。「絶対に許してはいけない!一方的に恋愛感情を抱き、思い通りにならなければ殺そうとする。今度こそ私を殺しに来るかもしれない」。男は叫んだ。「殺さない!!」「殺すわけがないだろう! 殺すわけがない!!」。殺人未遂と銃刀法違反で14年6か月の判決となり(東京地裁立川支部 2017年2月28日)、確定した。

 女性に後遺症が残った。口に麻痺が残り、食事や会話にも支障が出ている。視野が狭くなった。心的外傷後ストレス障害(PTSD)が残った。

(4) 法 改 正

 2016年12月、ストーカー規正法が改正され、2017年施行された。

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